美味しく、楽しく、学べる
施設内にはカフェがあり、美味しいジビエ料理を楽しむことができます。富士山麓で獲れた鹿肉を使ったハンバーガーやホットドッグは、出来たてをテイクアウトで提供しており、ソーセージやミートローフはお土産としてお持ち帰りいただけます。
一般的に加工施設ではモモやロースなどの部位ごとに塊で販売されることが多いですが、「DEAR DEER」では解体から食肉製品への最終加工・販売までを一貫して行っているため、ハムやソーセージなど食べやすい形に加工して販売されています。
また、ジビエついて学べるイラスト解説や書籍があるほか、タイミングが良ければガラス越しに加工作業も見ることができ、ジビエを体感できる施設として注目されています。
人と自然に寄り添う空間作り
ジビエの処理加工施設は、野生鳥獣の解体施設というマイナスのイメージから「嫌悪施設」として捉えられがちです。しかし、環境保全や持続可能な社会を考える上で非常に重要な産業であるにもかかわらず、多くの場合、人々の生活から離れた場所に建設されることが一般的です。こうしたマイナスイメージを変えるため、「DEAR DEER」では、一般の方々が親しみやすさを感じられる環境づくりを目指し、建築や空間設計にもこだわっています。
建物は黒を基調とした木の外壁が特徴で、庭園やテラスでは、垂直に伸びる木立の風景と水平の軒(のき)のデザインが調和し、森に溶け込むような優しく美しい空間が広がっています。
デッキテラスやベンチに腰掛け、周囲の自然をゆったりと眺めながら、美味しいジビエ料理を味わうことができるため、思わず長居したくなる心地よさです。
ジビエをいただく
早速、鹿肉のハンバーガーセットをいただきました。オーダーを受けてから焼き上げる新鮮な鹿肉のハンバーグは、あえて粗めに挽かれており、しっかりとした食感と豊かなボリューム感が楽しめます。
「ジビエは臭みがあって苦手…」という方もいますが、鹿肉にはほとんど臭みがなく、牛肉に似たさっぱりとした味わいの中に旨みが詰まっています。また、他の肉と比べて脂肪が少なく、高タンパクで鉄分も豊富なため、ヘルシーな食材としても注目されています。
バンズも地元の吉沢製パンで特別に作られており、ジビエに合うふわふわの食感が、鹿肉の旨みをさらに引き立ててくれます。
野生鹿の価値を見直す
近年、富士山麓では野生の鹿による食害が深刻化しており、森林の荒廃や生態系への影響が懸念されています。年間500頭の野生鹿が捕獲されていますが、加工処理施設がないため、ほとんどが埋却処理されているのが現状です。そこで、「マイナスの存在だった鹿を、なんとかプラスの存在に変えよう」という想いから、このプロジェクトが立ち上がりました。
構想から3年にわたり、2度にわたるふるさと納税クラウドファンディングを実施し、全国からの支援を受けてついに実現。鳥獣被害の防止や富士山の環境保全に取り組んでいます。
また、猟友会が捕獲した野生鹿をすべて受け入れて商品化することで、猟友会メンバーのモチベーション向上につなげ、組織の存続や強化を支援しています。
「尊い命を無駄にせず、活用することで良い循環を生み出そう」という想いから誕生した「DEAR DEER」。ジビエを通じた新しい観光施設としても注目されています。